コラム

2022.03.19蜂蜜&蜜蜂

【レンタルされる蜜蜂】海外の大規模農家は作物収穫のため蜜蜂をレンタルします

欧州ルクセンブルク ベルトランジュの菜の花

◆作物は花が咲いたら勝手に実がなるわけではありません

蜜蜂いなくして農作物なし?でもご紹介致しましたが、作物の花が咲いた後、きちんと実がなるには多くの植物には助けが必要です。その助け役がポリネーター(花粉媒介者)と呼ばれる昆虫たちです。
中でも蜜蜂はその筆頭です。もちろん植物の中には自分自身の花粉で受粉する自家受粉の仲間も多いですが、その場合実がなっても小さいかあるいは種子だけだったりします。
立派な実がなる作物としては他の株(お隣さん)の花粉で受粉する他家受粉の場合がほとんどです。ですのでポリネーターである蜜蜂が作物収穫には必要となります。

◆海外の大規模農家では蜜蜂を貸し出すビジネスが益々大切になっています

日本に比べ規模が大きな海外では蜜蜂に頼らざるを得ないようです。
例えばオーストラリアではアーモンド農家が最大の蜜蜂の借り手となっています。もともとオーストラリアに欧州から蜜蜂が持ち込まれたのは1800年代初期と言われてますので、長い付き合いと共に蜜蜂レンタルのビジネスが大きく成長していることになります。
農家の方々は個人の養蜂家に直接連絡を取る場合もありますが、会社形態のような大規模農家になると、ポリネーターブローカーと連絡を取ります。このブローカーは農家と養蜂家の間に入り、蜜蜂の大変な移動や契約書などの準備・手配を行います。
どの様なビジネスでも仲介役のブローカーが誕生するにはそれなりの市場規模があってこそですから、蜜蜂レンタルは海外では大きなビジネスなのです。

実際アメリカでは大きな市場になっています

表の数字は2018年3月に発表されたレポートからの抜粋ですが、中で使われていたデータは2015年の数字です。

アーモンドがオーストラリア同様に蜜蜂利用の多い作物なのですが、驚きは100%蜜蜂に頼っていることです。
2015年のドルは約120円程度だったので、当時でアメリカのアーモンドは約6400億円相当が蜜蜂のおかげで収穫できたことになります。
チェリーも100%頼っていますし、ブルーベリーは92%蜜蜂に頼っています。
この表以外にも蜜蜂レンタルを利用している作物は多いのですが、この表の作物だけを見てもアメリカでの蜜蜂レンタル市場はやはり大きいですね。

◆実は日本でも蜜蜂はレンタルされています

蜜蜂レンタルは海外だけの話ではなく、日本でも大きな養蜂園では蜜蜂を貸し出しています。
ポリネーターが大切なのは何も多くの実を収穫するためだけでなく、その実の質を高めることにまで影響します。
ですので日本の養蜂家の方々も「お借りした蜜蜂が元気でいい実がなります」と農家の人達からお褒めの言葉を頂いたりするようです。

蜜蜂には限らないですが、やはり農薬による昆虫へのダメージは大きいですから海外の蜜蜂レンタルの契約書では、貸出期間中は農薬の使用禁止、などの条件が入ったりするそうです。
環境保護に目が向けられ、養蜂家の方々と共に大いなるポリネーターである蜜蜂を守ってあげたいです。